兵庫教育大学大学院連合学校教育学研究科

(The Joint Graduate School (Ph.D. Program) in Science of School Education Hyogo University of Teacher Education)

project

project: I 社会系教科目の授業実践を支援する学習材の開発 -教師・学習材・子どもの相互関係の解明をめざして-

平成20年度採択プロジェクト

プロジェクトの名称
社会系教科目の授業実践を支援する学習材の開発
-教師・学習材・子どもの相互関係の解明をめざして-
プロジェクトの期間
平成20年4月1日~平成23年3月31日

プロジェクトの概要

プロジェクトの背景

A現状:近年の学校現場では,様々な学力調査の結果を受けて,あらためて子どもの基礎学力の向上が問われている。また,学ぶ意欲や知的好奇心の低下,知識を社会生活で活用する力の不足が指摘されている。教科教育学はこれらの課題を「教科指導の本質・理念」の視点から真摯に受けとめ,原理的・実践的な解決策を提起していくことが求められている。 B先行研究:これまで社会科教育学は,これらの課題に2つのアプローチで答えてきた。

1つは「授業開発」の研究。いわゆる「授業計画書」の開発である。課題解決に効果を発揮しうる授業モデルを,指導内容・発問・教授学習活動等をセットにして示そうとするものである。もう1つは「授業分析」の研究。既存の優れた授業を取り上げ,そこに隠れた学習指導の原則を明らかにすることで,課題解決に示唆を得ようとするものである。これらのアプローチは一定の成果を上げてきたが,教育現場からは,以下の限界も指摘されてきた。

「授業開発」の研究に対しては,「緻密すぎて使えない」という批判である。明確な問題意識にもとづいて目標を立て,詳細で緻密な授業モデルをつくるほど,柔軟性を欠き,理念を共有し理解できる一部の教員にしか使いこなせない,と揶揄される。

「授業分析」の研究に対しては,「具体策が見えない」との批判がある。確かに国内外の先駆的な実践と理論は示唆に富むが,現に明日の授業をどのように変えたらいいのか分からない,原理は理解できても,それを現実場面に役立てるのは容易ではない,と指摘される。    C課題:これらの批判に応えるには,2つのアプローチの中間項を模索しなければならない。それが,本プロジェクトの意図する「学習材:子どもの学習を支援する紙・Web・映像/音声等のメディアとそれの効果的な指導例を示した教育プログラム」の開発である。すなわち,
(1)「授業開発」研究の意義は継承し,特定の目標を合理的に達成するための内容構成とする。しかし,リジッドな構造は放棄し,多様な教育理念と教師の選択に開かれた構成とする。
(2)「授業分析」研究の成果を踏まえ,先行実践から抽出され確立された指導論を拠り所とする。しかし,理論を抽出して終わりではなく,単元内容に即した学習指導の理念型を例示する。
これら2つの要件を備えた学習材の開発である。

プロジェクトの目的と方法

本プロジェクトでは,これらの要件を備えた,社会系教科目の授業実践を支援する「学習材」開発を目的とする。本目的を達成するために,以下の方法を採る。

  1. 多様な形態の学習材を,小中高の各学校段階ならびに複数の教科・領域で開発する。
  2. 1で開発した学習材を試行し,授業における教師の使い方と子どもの理解度を検証する。
  3. 2の結果を精査し,①教科指導の目的を具現するとともに,②教師の授業づくりを支援し,③子どもの授業理解と学習意欲を高める,「優れた学習材」の条件を体系化する。
  4. 3をめぐる議論を,4大学の大学院生ならびに外国研究機関を交えて実施することで,研究成果を深化させる。

期待される成果

本プロジェクトで期待される成果は,以下の4点である。これらの成果は,それぞれ上の4つの方法論に由来する。

  1. 学校現場の授業実践を支援することができる。社会科・地理歴史科・公民科・生活科・総合的な学習の時間等で活用できる学習材を開発することで,広く授業改善に貢献できる。とくに学習指導要領の改訂で変化の大きい項目に,開発のターゲットを絞りたい。
  2. (学習材を媒介にした)教師と子どもの関わりを捉える教科教育実践学の方法論を洗練させることができる。学習材の①開発者の意図,②教師の活用,③子どもの理解,これら3者の相互作用をシステム論的に解明したい。
  3. 学界の関心はもとより,教科書・資料集・副読本等の編纂を手がける教育界,産業界の知的ニーズに応えることができる。本プロジェクトを通じて,優れた学習材を生みだす理論的根拠を提供したい。
  4. 研究と教育の一体化ならびに国際化を図ることができる。本研究を,大学院生と外国研究機関の共同で推進する,またセミナーを4大学の大学院生に公開し,議論に参加する場を設けることで,大学院生の問題意識を高めたい。

チーム構成員

プロジェクトに参加する研究科教員

チーム構成員氏名 連合講座 大学 職名等 役割分担 (◎はチームリーダー)
(チームリーダー)
西村 公孝
社会系教育 鳴門教育大学 教授 ◎プロジェクトの企画・総括
中等公民の学習材開発
岩田 一彦 社会系教育 兵庫教育大学 研究科特任教授 プロジェクトへの助言・指導
社会系教科目の学習材の総合的開発
梅津 正美 社会系教育 鳴門教育大学 教授 中等歴史の学習材開発
桑原 敏典 社会系教育 岡山大学 准教授 初等社会・初等生活及び
総合学習の学習材開発
志村 喬 社会系教育 上越教育大学 准教授 中等地理の学習材開発

プロジェクト協力者

氏名
大学
職名
役割分担
伊藤 直之 鳴門教育大学 准教授  

プロジェクトに参加する院生

氏名
配属大学・連合講座・学年
役割分担
中本 和彦 鳴門教育大学・
社会系教育・D2
今日の「社会経済システム」を捉える学習材開発と有効性の検証

プロジェクト研究員

氏名
配属・職名
推薦教員
役割分担
草原 和博 広島大学・准教授 西村 公孝 社会系教科目の学習材の総合的開発
Kaori Okumoto Institute of Education
London University 研究員
岩田 一彦 英国との共同研究体制の構築
ロンドン大学の研究者との交流支援
Anthony Haynes The Professional and 
Higher Partnership社経営
北京師範大学客員教授
草原 和博 英国における学習材の開発・
活用状況の調査支援
馬場 勝 兵庫県教育委員会
義務教育課・指導主事
岩田 一彦 日本と世界の「成り立ちや地域構成」を捉える
学習材開発と有効性の検証
石川 照子 兵庫県立西宮高等学校・教諭 西村 公孝 「国家・伝統文化・宗教」を捉える
学習材開発と有効性の検証
疋田 晴敬 愛知県立中村高等学校・教諭 西村 公孝 高等学校における学習材の開発と
有効性の検証
坂井 誠亮 奈良女子大学附属小学校・教諭 西村 公孝 小学校における学習材の開発と
有効性の検証
横井 香織 静岡市立観山中学校・教諭 西村 公孝 中学校における学習材の開発と
有効性の検証
田中 伸 大谷大学 西村 公孝 社会系教科目の学習材の総合的開発

※職名は平成22年4月1日現在による。

研究成果報告