project: I

プロジェクトの概要

プロジェクトの背景

A現状:近年の学校現場では,様々な学力調査の結果を受けて,あらためて子どもの基礎学力の向上が問われている。また,学ぶ意欲や知的好奇心の低下,知識を社会生活で活用する力の不足が指摘されている。教科教育学はこれらの課題を「教科指導の本質・理念」の視点から真摯に受けとめ,原理的・実践的な解決策を提起していくことが求められている。 B先行研究:これまで社会科教育学は,これらの課題に2つのアプローチで答えてきた。

1つは「授業開発」の研究。いわゆる「授業計画書」の開発である。課題解決に効果を発揮しうる授業モデルを,指導内容・発問・教授学習活動等をセットにして示そうとするものである。もう1つは「授業分析」の研究。既存の優れた授業を取り上げ,そこに隠れた学習指導の原則を明らかにすることで,課題解決に示唆を得ようとするものである。これらのアプローチは一定の成果を上げてきたが,教育現場からは,以下の限界も指摘されてきた。

  「授業開発」の研究に対しては,「緻密すぎて使えない」という批判である。明確な問題意識にもとづいて目標を立て,詳細で緻密な授業モデルをつくるほど,柔軟性を欠き,理念を共有し理解できる一部の教員にしか使いこなせない,と揶揄される。

  「授業分析」の研究に対しては,「具体策が見えない」との批判がある。確かに国内外の先駆的な実践と理論は示唆に富むが,現に明日の授業をどのように変えたらいいのか分からない,原理は理解できても,それを現実場面に役立てるのは容易ではない,と指摘される。    C課題:これらの批判に応えるには,2つのアプローチの中間項を模索しなければならない。それが,本プロジェクトの意図する「学習材:子どもの学習を支援する紙・Web・映像/音声等のメディアとそれの効果的な指導例を示した教育プログラム」の開発である。すなわち,
  (1)「授業開発」研究の意義は継承し,特定の目標を合理的に達成するための内容構成とする。しかし,リジッドな構造は放棄し,多様な教育理念と教師の選択に開かれた構成とする。
  (2)「授業分析」研究の成果を踏まえ,先行実践から抽出され確立された指導論を拠り所とする。しかし,理論を抽出して終わりではなく,単元内容に即した学習指導の理念型を例示する。
  これら2つの要件を備えた学習材の開発である。

プロジェクトの目的と方法

 本プロジェクトでは,これらの要件を備えた,社会系教科目の授業実践を支援する「学習材」開発を目的とする。本目的を達成するために,以下の方法を採る。

  1. 多様な形態の学習材を,小中高の各学校段階ならびに複数の教科・領域で開発する。
  2. 1で開発した学習材を試行し,授業における教師の使い方と子どもの理解度を検証する。
  3. 2の結果を精査し,①教科指導の目的を具現するとともに,②教師の授業づくりを支援し,③子どもの授業理解と学習意欲を高める,「優れた学習材」の条件を体系化する。
  4. 3をめぐる議論を,4大学の大学院生ならびに外国研究機関を交えて実施することで,研究成果を深化させる。