掲載論文

「教育実践学論集」掲載論文 和文要旨

第8号掲載論文

著者: 松原 美砂
論文題目: 協働する教師集団に関する事例研究
 協働する教師集団の内実を明らかにすることを目的に,一高等学校において参与観察による事例調査を行った。まず,協働する教師集団の内実の一つとして「相補性」を抽出し,相補性の表出の様相,教師間の階層性を含めた相補性の様態を描き出した。さらに,協働する教師集団における相補性の三つの側面について明らかにした。第一に教師集団全体としての相補性,第二に個々の教師間の相補性,第三に全体と個人との相補性のバランスである。そして,これら三つの側面が教師集団における協働成立への鍵となる可能性をもっていることを示唆した。
キーワード: 高等学校,教師集団,協働,相補性,事例研究
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著者: 小野 由美子,近森 憲助,小澤 大成,喜多 雅一
論文題目: 国際教育協力における「授業研究」の有効性-南アフリカ人教師による生物の授業を事例として-
 2004年のJICA国別特設南アフリカ共和国「理数科教員養成者研修」では,クラスター・リーダー(CL)の高校教員に対し授業研究に関する研修を実施した。ある南ア教員が行った生物の授業について,授業検討会,模擬及び研究授業の映像・文字データや授業の観察結果について分析し,授業の変容過程を検討した。この結果,この教員が検討会における参加者からのコメントや自己の振り返りをもとにして授業を改善していること,授業の展開部の構成及び生徒との交流が顕著に変容していることなどが明らかとなった。また,帰国後の本人へのインタビューでは,授業研究によって授業観や教師の役割観に変化がもたらされたことが確認された。
キーワード: 国際教育協力,授業研究,南アフリカ共和国,現職教員研修
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著者: 唐 鶴英
論文題目: 聾学校生徒,教師,保護者による補聴器の主観評価に対する因子分析
 本研究では,聾学校生徒,教師,保護者の三者による補聴器の主観評価の構造,またそれぞれその構造の共通点と相違点を明らかにすることを目的とした。N県にある聾学校に在籍する生徒とその教師及び保護者を対象として,補聴器の評価に関わるアンケート調査を行い,評価結果を因子分析した。分析の結果から,聾学校生徒,教師,保護者の三者は「補聴器の効果」に関する主観評価の構造に共通点があり,「補聴器への印象・態度」と「補聴器の問題」に関しては,相違点があることが分かった。本研究から,主観評価票の作成につながる資料が得られた。
キーワード: 聾学校生徒,補聴器の主観評価,因子分析
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著者: 吉川 和幸,藤原 義博
論文題目: 知的障害を伴う自閉症児の要求言語行動の行動型及び行動連鎖に関する研究-要求充足者の位置を独立変数として-
 本研究では,知的障害を伴う自閉症児の要求言語行動の形成における,適切な標的行動の選定とその確立のために,子どもの要求言語行動の行動型及び行動連鎖の査定を行った。単一事例実験計画法を用い,独立変数として要求充足者の位置を操作し,条件Aでは要求充足者は要求対象物が置かれた棚の傍に立ち,条件Bでは要求充足者は棚とは反対側の壁際に立った。査定の結果,要求充足者を棚へ導く行動型が条件Bでのみ観察された。また,対象児の一人は,要求対象物を特定化する行動型を殆ど示さなかった。考察では,対象児にとって適切な標的行動と,その獲得のための手立てについて検討し,標的行動選定における要求場面に関する環境条件の査定の必要性について論じた。
キーワード: 知的障害を伴う自閉症児,要求言語行動,行動型,行動連鎖,要求充足者の位置
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著者: 高田 豊司
論文題目: 個人心理療法における居場所の活用に関する一考察-被害妄想を呈した青年の事例を通して-
 本論文の目的は,被害妄想を呈した青年の事例を通して,個人心理療法における居場所の活用意義について考察を加えることである。個人療法では,セラピストがクライエントの行動に肯定的な意味を付与すると同時に,そのニーズに根ざしながら,協働して目標を具体化していくことが重要であると考えられた。また援助とは変化を志向する,逆に「居場所」とは変化を志向しない活動と言える。このような「居場所」の特性を活用することで,援助に対してクライエントが自由に意味を発見し,それに根ざした体験を得ることを促していくと考えられる。また,このような活動をあえて確保することによって,援助に伴う固執的な態度から解放されると考えられる。
キーワード: 居場所,支持的心理療法,統合失調症
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著者: 伊藤 信寿,柳原 正文
論文題目: ペアレント・トレーニングがADHD児を持つ母親の養育行動に及ぼす効果
 本研究の目的は,注意欠陥・多動性障害(以下ADHD)児に対し,標的行動の決定や対処法に関して協議の場を設けたペアレント・トレーニングを行うことによって,母親の子どもへの関わり方にどのような変化がみられるのかを明らかにすることである。対象は,ADHD児をもつ母親3名である。トレーニングは,週1回を1セッションとし,10週間実施した。効果判定は,家庭において母親が評定する行動チェックリストと,親子の相互関係場面を撮影したビデオを分析することにより行った。結果は,全ての事例において子どもに対する母親の適切な言動が増えた。その要因として,母親の養育スキルが向上したこと,母親が子どもに対し受容的になれたことを考察した。
キーワード: ペアレント・トレーニング,ADHD,養育行動,養育ストレス
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著者: 葛西 真記子,春木 幸恵
論文題目: 大学院でカウンセリングを学んだ教師の指導態度とアイデンティティ観の変容-A教育大学の修了生への調査より-
 本研究は,教師が大学院でカウンセリングを学ぶことにより,児童生徒に対する指導態度がいかに変容するか,アイデンティティ観の観点から明らかにすることを目的とした。A教育大学大学院でカウンセリングを学んだ現職教員160名に質問紙による調査を行った。その結果,大学院でカウンセリングを学んだほとんどの教師のアイデンティティ観は教師としての自分とカウンセラーとしての自分という二つのアイデンティティ観を持つようになったと感じており,また,性別・年齢・校種などの属性に関係なく,大学院でカウンセリングを学ぶことは,教師の指導態度をより教育相談的なものに変容させる効果があったと感じているという結果となった。
キーワード: 職業的アイデンティティ,心理臨床教育,教育相談,指導態度,大学院研修
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著者: 下西 善三郎
論文題目: 『徒然草』と本居宣長-青年期の受容と晩年の批判-
 本稿は,本居宣長における『徒然草』受容の実態をあきらかにし,晩年の『徒然草』批判の根拠と意図に迫ることを目的とする。そのため,まず,青年期宣長の著作を具体的に検証した。次に,批判の根拠としての「歌」の意味を問い,さらに宣長における「神代」「漢意」に関連づけて批判の意味を問い直した。その結果,まず,宣長の『徒然草』受容における,青年時代の親炙と三〇代半ば以降の黙過を明らかにした。そこから,『徒然草』を名指す批判について,それは,『徒然草』に内在する「漢意」批判であると同時に,『徒然草』を利用して,宣長同時代の「漢意」を助長する「世の物知り人」を批判するためのものであったと結論づけた。
キーワード: 受容,批判,漢意,和歌,物知り人
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著者: 有働 玲子
論文題目: 昭和20・30年代における「話すこと」「聞くこと」の指導の一考察-関口重平の実践を中心にして-
 本稿の目的は,昭和20・30年代における「話すこと」「聞くこと」の小学校での実践事例と教材開発事例を考察し,その今日的意義を明らかにすることにある。対象としては,東京都杉並区済美小学校教諭の関口重平の実践に注目した。それは,同区の小中国語研究部の先駆的な体質に支えられつつ,児童相互の交流促進のための方策の追求,学習の目的と評価の明確化,教師によるモデルの提示の三つを方針とした意欲的なものとして評価することができる。とりわけ視聴覚機器を用いた,児童の言語実態に即しての教材開発の視点は重要であり,また,「話したこと」の中身を学習者自らが確認する必要性に注目した点は意義深い。
キーワード: 話すこと・聞くこと,視聴覚機器,西村省吾,吉田瑞穂,関口重平
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著者: 陳 瑜
論文題目: 台北帝国大学設立構想に関する研究
 本研究は1928年植民地台湾に創設された台北帝国大学の設立構想について考察したものである。本研究を通して,台北帝大設立計画は1919年,医農文科の総合実業大学として田健治郎総督によって出され,その後内台共学制の実施,台北高校の創設の下で,伊沢多喜男総督は初代総長幣原坦らと学部組織などを決定し,大学の学術研究機能を強調し,人文科学と自然科学の両系統をもつ総合大学をつくり,台湾の地理上の特徴を発揮しながら,文政学部は南方南洋,理農学部は熱帯亜熱帯に関する学術研究に重点を置く方針を明確にしたものである。開校時は学界の権威者及び新進の優秀な若手が集められ,優れた教授陣で出発したことを明らかにした。
キーワード: 台北帝国大学,伊沢多喜男,幣原坦,文政学部,理農学部
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著者: 疋田 晴敬
論文題目: 価値追求型の公民科授業構想 -「校則と自己決定権」を事例として-
 公民科教育の目的は市民的資質の育成にある。市民的資質は社会認識を土台として民主的社会の形成者としての自覚と態度から構成されている。社会の制度・組織・機能などを科学的に認識し,市民としての自覚・態度をもつためには,様々な社会問題に対して,事実認識に基づく価値判断・価値追求がおこなわれなければならない。本稿では,生徒が日常生活の中で形成してきた価値観を揺さぶるような社会問題を提起し,事実認識を深め,他の生徒との議論を通じて自己の価値観をより客観的・合理的なものに再構成し,当該問題の価値判断・価値追求ができるようにするために,公民科授業の構成理論とそれに基づく授業開発例を提案することを目的とする。
キーワード: 市民的資質,価値,公民科授業,自己決定権
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著者: KAHANDUGODA MANAGE Nadeera S.K, SAIJO Noriko and MURATA Katsuo
論文題目: HOW TO ENHANCE LEANERS’ MOTIVATION FOR SCIENCE STUDIES -Application of activity based science lesson in Sri Lankan and Japanese high schools-
 Qualitative science education enhances the learners’ motivation for learning improving knowledge, competence and skills for a successful evolvement of individuals, and that indicates the technological empowerment of a nation for better development. Students’ interest in science education is significantly decreasing in all over the world due to the various reasons. Enhancement of learners’ involvement for science education was focused in this activity by introducing a learner centered outcome based science lesson for Sri Lankan and Japanese high school students. The paper reveals a significant enhancement of learners’ motivation for science education by the application of proper teaching strategies and teaching skills towards the improvement of scientific knowledge, competence and different skills among high school science students. An activity based teaching material was developed in Naruto University of Education - Japan, to persuade students’ eagerness for the science education using Japanese teaching skills and strategies and applied in some Sri Lankan high schools and Jonan high school in Tokushima-Japan.
キーワード:Science Education, Learners’eagerness, Water Chemistry, Learner centered activity, Sri Lankan and Japanese high schools.
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著者: 溝口 希久生
論文題目: 指導内容の視点からみた小学校における「創造的音楽づくり」の発展的様相-3,4,6年生の事例分析を通して-
 本研究の目的は,子どもが「創造的音楽づくり」において,西園の提唱する指導内容の三側面(「形式的側面」「内容的側面」「技能的側面」)にどのように取り組んでいるのか,その発展的様相を小学3,4,6年生ごとに明らかにすることである。そこでそれらの学年を対象に授業を実践し,指導内容の三側面を視点に学習過程を分析した。その結果,①3,4,6年の発展的様相,②発展的様相の道筋,③3~6年の学年を通した発展性,の3点を明らかにした。そこでは,学年が進むと「内容的側面」の感受(質の捉え方)も発展し,それに対応してより多くの諸要素(「形式的側面」)の知覚と,それを実現するためのより高い「技能的側面」の探究がなされ,音楽が洗練されていくことがわかった。
キーワード:「創造的音楽づくり」,指導内容の三側面,発展的様相
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著者: 松下 健二,高梨 里絵,上野 洋介
論文題目: 前方支持回転の技術指導における効果的指示内容に関する研究
 前方支持回転は回転軸と身体重心とからなる回転半径を回転中に短縮させ,身体重心を鉄棒の鉛直上まで移動させる技であるが,同じ鉄棒運動の逆上がりや後方支持回転に比べて学校現場では指導成功率が低い技とされている。この原因を教師による半径を短縮させる時期を示す指示内容と児童・生徒の実際の半径を短縮させる時期との時間的ズレにあるととらえた。そこで,一般的に使用されている指示内容(鉄棒直下で首を曲げる)と実際の動作との整合性を10名の被験者の成功例と失敗例について動作分析をし,検討した。その結果,首を曲げるなどの身体の長軸の長さを変化させる時期が実際の動きと「指示内容」とでは異なることが認められ,技を成功するには一般的に言われている鉄棒直下よりもより早期な頃(鉄棒水平頃)に行わねばならないことが明らかになった。
キーワード: 前方支持回転,指示内容,動作分析,時期的誤差,頚部屈曲
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著者: 上原 禎弘
論文題目: 体育授業における教師の言語的相互作用に関する研究-小学校高学年:学習集団機能を中心として-
 本研究では,小学校高学年の走り幅跳びの授業(9学級)を対象に,学習集団機能を中心として態度得点と技能を高めた学級とそうでない学級の教師の発言を品詞により分析・検討した。その結果,3つの学習成果を高めるためには,最初に名詞(人名)と代名詞(人称)を用いて児童一人ひとりにより多く関わり,次に課題の把握場面では副詞(叙述,語の副詞),名詞(動作),形容詞(二項対立)を用いて児童の考えを認めた上で課題を明確に提示し,問いかけながら課題の形成情報を流すことが,さらに課題の解決場面では副詞(叙述・語の副詞)を中心に名詞(動作,時間)を用いて,より具体的な矯正的フィ-ドバックをかけることで児童の課題解決に応ずることがそれぞれ重要であると考えられた。
キーワード: 小学校高学年,走り幅跳び,言語的相互作用,学習集団機能,品詞分析
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著者: 厚東 芳樹,梅野 圭史,山口 孝治
論文題目: 小学校体育授業に対する教師の反省的思考に関する研究-小学校低学年担任教師の場合-
 本研究は,小学校低学年(2・3年生)担任教師89名を対象に,態度得点の高い教師群とそうでない教師群とで反省的思考の観点が具体的にどのように異なるのか因子分析法を用いて検討した。その結果,「指導技術」「観察・判断」「学習記録」「授業計画」の4因子が導出され,上記4因子は体育授業に対する教師の反省的思考の中核をなすものと考えられた。次に,態度得点の高い教師の反省的思考の観点を導出した結果,「仲間と関わる態度の育成」を目標に,「授業設計場面」では「児童一人ひとりにあった授業計画の立案」を心がけ,「授業展開場面」では「学習課題の明確化」と「多様な課題解決」を見定めていることが認められた。
キーワード: 小学校体育授業,小学校低学年(2・3年生)担任教師,態度得点,反省的思考
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著者: 武田 庸助,林 修,木原 資裕,梅野 圭史
論文題目: 体育授業における人間関係力を高める運動教材の開発過程に関する研究-小学校4年生:スポーツチャンバラにおける学習過程の最適化-
 本研究では,対人的スポーツに属するスポーツチャンバラを小学校4年生に導入することで,彼らの人間関係力の向上に資する学習過程を「プランニングープロダクト」研究法を用いて導出することを目的とした。その結果,愛好的態度,学習集団機能,および打突動作からみた技能の学習成果のいずれにおいても,プレイの発展過程(パイディア→ルドウス)を基軸に据えた学習過程よりも,スポーツチャンバラを全単元扱いとして実践した方が小学校4年生児童に合っているものと考えられ,彼らの人間関係力を高める運動教材である可能性が高いことが認められた。
キーワード: 体育授業,人間関係,スポーツチャンバラ,指導プログラム
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