掲載論文

「教育実践学論集」掲載論文 和文要旨

第7号掲載論文

著者: 富久 國夫
論文題目: 教師の職能発達を支える校長の指導助言機能 ―授業研究を中心に―
 本研究の目的は,校長には,とくに授業研究の中で,現実的に,実際的に対応しうる確かな授業観,学習理論をそなえた指導助言の力量が不可欠であることを明らかにすることである。なぜなら,校長の指導助言機能を教師の職能発達の重要な促進要因の一つとして捉えているからである。そこで,数人の米国研究者による日本の授業研究についての研究を視点として,わが国B県の授業研究事例に焦点をあて,校長の指導助言機能の効果について検証を試みた。結論として,校長の指導助言機能を生かした授業研究では,校長が教師と共に発展させた知識を共有することとなり,日々の教室の中で教師の資質を向上させ,学習指導を改善させることが可能になる。
キーワード: 校長の指導助言機能, 教師の職能発達,授業研究,学習理論,共に学ぶ者のリーダー
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著者: 角谷 詩織
論文題目: 中学生の適応感を高める「総合的な学習の時間」 -「知的広がり」要因を組み込んだ共分散構造分析から-
 中学生にとっての「総合的な学習の時間」の意義を検討した。中学1,2,3年生を対象とし,1999年7月,2000年2~3月に質問紙調査を行った(有効回答者数772名)。共分散構造分析の結果,仮説モデルの一部が修正された。コンピテンスがポジティブであるほど「総合的な学習の時間」において自律的活動ができ,その意義を見出すこと,「総合的な学習の時間」に意義を見出すことが出来た場合,興味の広がりやポジティブな学習観の形成といった知的広がりを通して適応感が高まることが示された。「総合的な学習の時間」へのポジティブな意識は,中学生自身のコンピテンスの影響を受けながらも,知的広がりを通して適応感に影響を及ぼし得ることが推測された。
キーワード: 総合的な学習の時間,中学生,興味の広がり,コンピテンス,共分散構造分析
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著者: 西川 純,久光 敏史,久保田 善彦,戸北 凱惟
論文題目: ゼミナールにおける属性の異なる構成員間の会話に関する研究 ゼミナールにおける会話構造
 本研究は, 新教育大学におけるゼミナールにおいて,円滑な会話を阻害する会話構造を明らかにすることと,その改善の糸口を探ることを目的とした。調査1では6つの研究室を対象として,その研究室のゼミナールにおける会話を分析した。その結果, ゼミナールの教員と構成員の会話数を分析すると,教員の発言数が多いと構成員の発言数が少なくなること、また教員の発言数が多い会話を分析すると,I-R-E構造による教員からの知識の伝達が強調された展開であること、教師の発言が自由な意見交換を阻害していることがわかった。調査2では,教員の発言が少ない研究室を対象として,その研究室のゼミの会話を継続的に記録・分析した。その結果, 前期は,教員の発言が少ない代わりに,現職院生の発言が強く働いていた。そのため学卒院生や学部生の発言が少なくなった。後期の現職院生は,他の立場(学部生など)の考えや体験が,研究に重要な示唆を与えることを知り,その発言を控えるようになった。そのため各自の経験や考えを比較的自由に発言しあえた。
  多様な背景を持つ学生のあつまる新教育大のゼミナールでは,知識伝達の場としてだけでなく,共同で知を作り上げる場としての機能することが望まれる。
キーワード: ゼミナール,会話構造,属性の異なる構成員
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著者: 寺田 智礼
論文題目: 中学生の心理的支えに及ぼす同胞の種類の影響に関する研究 -同胞なし,同胞男性,同胞女性,同胞異性,同胞混成別による比較を通して-
 本研究は,中学校の全学年の生徒989名を対象に,自己記入式質問紙を用いた「心理的支え」に関する調査研究である。
  串崎(1998)「心理的支え尺度(大学生版)」と寺田・田中・葛西(2002)「中学生版心理的支え尺度」の研究では,尺度の作成と学年,性による比較を通してその特徴を明らかにしているが,同胞に関する分析は行っていない。
  そこで,本研究では,有効回答704名の生徒を同胞の種類毎に分類し,寺田・田中・葛西(2002)の尺度を用いて,その特徴を明らかにすることを目的とした。その結果,同胞男性は,「友人」による支えにおいて,同胞女性,同胞異性より低く感じていることが明らかになった。
キーワード: 中学生,心理的支え,同胞の種類
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著者: MIYASAKO Nobuyoshi,TAKATSUKA Shigenobu
論文題目: What Relationships Do the Efficiency of Phonological Coding and Working Memory Capacity Have with Reading Comprehension for Japanese Learners of English?
 This article investigated into differences between first- and third-year senior high school students concerning: (a) the efficiencies of phonological coding and working memory capacities; and (b) the relationships of these two variables with reading comprehension. Also explored was whether the relationships were reflected in word-retaining strategies of the first-year students in the reading span tests for measuring working memory capacities. The findings were: (a) students may improve their working memory capacities but may not improve the efficiencies of phonological coding during the first two years of senior high school; (b) the efficiency of phonological coding contributes to reading comprehension more greatly for first-year students, but working memory capacity contributes to reading comprehension for third-year students; and (c) the word-retaining strategies of first-year students reflect the relationships between the two variables and reading comprehension. The reasons for these findings were discussed and pedagogical implications were shown.
キーワード: phonological coding, working memory capacity, reading comprehension
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著者: 岡田 直美
論文題目: 為氏の見た『定家卿百番自歌合』52番右歌
 本稿では,藤原為氏が『定家卿百番自歌合』52番右歌をどのように受容したかについて考察した。「不逢恋」の歌として詠まれた『定家卿百番自歌合』52番右歌は,「遇不逢恋」の歌として為氏の撰した『続拾遺集』恋歌四に入集している。定家は『定家卿百番自歌合』60番右歌に『源氏物語』の空蝉の面影を重ね,「遇不逢恋」の歌として『新勅撰集』恋歌五に入集させているが,この配列方法を見た為氏は『定家卿百番自歌合』52番右歌にも空蝉の物語を重ねて「遇不逢恋」の歌として『続拾遺集』恋歌四に配したと考えられる。歌群に物語を重ねて歌境の再構成をする定家の配列手法を,為氏は『続拾遺集』において継承しているのである。
キーワード: 『定家卿百番自歌合』52番右歌,藤原為氏,「雁」と「衣」,『源氏物語』空蝉巻,『続拾遺集』
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著者: 野邊 政雄
論文題目: 地方小都市に住む高齢女性の主観的幸福感
 本稿の目的は、地方小都市に住む高齢女性の主観的幸福感に影響を与える要因を明らかにすることである。1997年から1998年にかけて岡山県高梁市に住む65歳以上80歳未満の女性を対象に標本調査をおこなった。そのデータを分析することによって、次の2点を明らかにした。①健康で、年収の多い高齢女性は、高い主観的幸福感を持っていた。要因の中でも、健康度は、特に大きな影響を主観的幸福感に与えていた。②同居家族関係と近隣関係が多いほど、高齢女性はモラールが高かった。また、同居家族関係、近隣関係、友人関係が多いほど、高齢女性は生活満足度が高かった。各種の社会関係の中で、近隣関係数が主観的幸福感への影響力が最も強かった。
キーワード: 主観的幸福感、高齢女性、地方小都市、社会関係、集団加入
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著者: 梅津 正美,加藤 寿朗
論文題目: 社会科教育実践力育成のための教育実習指導の改善 -「教育実習到達目標段階表(社会科)」の開発と試行を通して-
 本研究では,社会科教育実践力育成のための教育実習指導改善のひとつの試みとして,「教育実習到達目標段階表(社会科)」を開発し,教育実習生に対して実験的に試行した。社会科教育実践力の内容は,授業構想力・授業展開力・授業評価力の3つである。「段階表」は,社会科教育実践力の内容に即して構成した。試行結果の分析を通じて,(1)「段階表」の活用が,学部学生の社会科教育実践力の向上にとって有効であること,(2)学生の段階到達度の向上は,授業構想力に比べて,授業展開力において顕著であること,(3)「段階表」は,指導教員や学生が自己の実践力を評価し改善していくための参照点として機能すること,が明らかになった。
キーワード: 社会科,教育実践力,教員養成,教育実習指導,教育実習到達目標段階表
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著者: 室谷 茂
論文題目: 国名と地名からみた西アジア・北アフリカ文化圏の考察
 この論文は,西アジア・北アフリカの国名や地名という視点から,文化圏の主要な特徴を明らかにすることをねらいとしたものである。現在の国名や歴史的国名,都市名,地方名,町村名を分析した結果,次のように要約できる。西アジア・北アフリカとヨーロッパは同じ文化圏に属し,その後自然環境の特性によって2つの文化に分かれた。西アジア・北アフリカは都市文化のふるさとであり,多様な宗教の発祥地である。地域社会は民族主義・部族主義思想が強くでている。さらに世界の文化や貿易の十字路であると共に結集地として重要な役割を担っていたところである。
キーワード: 国名,地名,文化圏,西アジア, 北アフリカ
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著者: 和田 幸司
論文題目: 部落寺院毛坊主に関する一考察 ‐丹波国多紀郡惣道場西誓寺を事例として‐
 本研究は,近世丹波国多紀郡高屋村川西西誓寺の住職継承を手がかりにし,部落寺院住職が自剃刀以前において,どのような身分の者が住持を勤めていたのかを明らかにしていくものである。そのために,まず西誓寺の開基状況,真宗寺院としての成長過程を明らかにする。次に,本願寺長御殿作成の「天保八丁酉年十月ヨリ穢寺血誓御礼物御納戸江渡帳」から,「丹波国高屋村川西,惣道場西誓寺,毛坊惣左衛門,了観」の記事に着目し,西誓寺での毛坊主がどのように継承されたのかを明らかにする。その上で,村内での毛坊主の位置,および,毛坊主擁立が真宗寺院としての成長と深く関わっていたことを指摘したい。
キーワード: 浄土真宗,部落寺院,毛坊主,西誓寺,自剃刀
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著者: 竹内 俊一,高見 仁志
論文題目: 音楽科教師の力量形成に関する研究 -教授行為の基盤となる教師の内面的思考「判断」「選択」を中心として-
 本研究では,音楽授業における教師の内面的思考を,次の3段階に分けその枠組みを明確にした。それは,(1)状況把握としての内面的思考,(2)判断としての内面的思考,(3)選択としての内面的思考である。その中で今回は(2)と(3)に焦点をあて,新人教師・熟練教師各2名の合唱団モデル型音楽授業を通して,再生刺激法を用いてデータを収集し分析を試みた。その結果,(2)に関しては「推論を伴った判断」「見通しを持った判断」,(3)に関しては「内面的思考の完結」の点において,新人教師と熟練教師の間に差異が確認された。この結果を基に音楽授業における教師の「判断する力量」「教授行為を選択する力量」を高めるための方略を提示した。
キーワード: 教授行為,判断としての内面的思考,選択としての内面的思考,新人教師,熟練教師
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著者: 岡本 信一
論文題目: 音楽科教育における「異化」作用の生成 -「イメージの知」による<学び>の意味生成を求めて-
 1989年版の学習指導要領の改定以来,関心・意欲・態度という言葉が重視され続けている。この背景にある知識と経験,主観と客観などの二元論的な対立は、これまで音楽科の授業崩壊や児童や生徒の能動的な学習活動の欠如の原因となってきた。本論では、彼らの能動性を引き出すために,「イメージの知」に着目した。その知の獲得を促すためには,題材に対する彼らの既成の概念や体制化された感覚-ロゴスの知-を直感や類推へと組み替えるような「イメージの分節化された」問いかけやパースペクティブの提示などの特殊な働きかけ-「異化」作用-が必要になる。この作用によって,児童・生徒は学ぶことの意味を生成する過程をたどることを可能になる。
キーワード: イメージの知,ロゴスの知,「異化」作用,能動性,イメージの分節化
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著者: 中村 幸子
論文題目: 百武兼行と松岡壽のローマにおける絵画修業 ―西洋画受容の過程と美術観の形成―
 本稿は,ローマにおける百武兼行(1842‐1884)の絵画修業について考察したものであり,1880年(明治13)から82年までの間に制作された作品を検討し,百武にとってのローマ滞在の意義と百武の美術観を明らかにすることを目的としたものである。百武のローマ滞在の意義や美術観を読み解く手がかりとして,ローマで共に絵画修業を行った松岡壽(1862‐1944)を挙げる。学習の過程に着目して作品を検討することで,百武の美術観を一層明確にできると考える。考察の結果百武は,8年間の絵画修業を通して西洋美術を理解するための基礎を形成し,西洋絵画が日本に貢献する学問であると認識した上で絵画修業を行っていたという結論を得た。
キーワード: 百武兼行,松岡壽,西洋絵画の習得,美術観の形成過程,歴史画制作
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著者: 山本 忠志,平松 聡明,三野 耕,成山 公一
論文題目: バスケットボールの技術指導における技能を向上させる指導語に関する研究
 本研究は,著名なコーチやアスリートによって著されたバスケットボールの指導書から共通した個人技術の指導内容を取りあげるとともに,これまでに明らかにされている運動学的,バイオメカニクス的な技術分析結果を加味して,技能を向上させるための「指導語」を作成し,その有効性を検討した。
  その結果,作成された「指導語」を用いた実験群(3週間,5日/週,2時間/日)において,技術的評価が高まり,技能テストにおけるパス回数の増加やドリブル時間の短縮が認められ,対照とした集団と同等以上の効果がみられた。
キーワード: バスケットボール,個人技術,技能テスト,指導語,中学生女子選手
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