掲載論文

「教育実践学論集」掲載論文 和文要旨

第5号掲載論文

著者: 光田 尚美
論文題目: 幼稚園教諭の意識変革に基づく保育スキル変容に関する研究 -援助スキル分析を手がかりにして-
  本稿の目的は,sehende Liebeを鍵概念に,ペスタロッチー教育思想を「実践のなかの理論」として考察することによって,そこに見出される「理論=実践」問題を明らかにすることである。『探究』から「メトーデ」,そして「新年講演」に到る過程のペスタロッチーの思想を再考し,そこから導き出される「愛」の意味について考察する。そしてsehende Liebe概念が,合理的要素(思惟)と非合理的要素(愛)との統合の可能性を示していること,その陶冶過程には,力動的な教育的関係が想定されていることを明らかにし,それらがsehende Liebe概念の実践学的意義に連なっていることを指摘する。以上のことを踏まえて,ペスタロッチーの今日性や思想研究の意義についても言及する。
キーワード:ペスタロッチー,「理論=実践」問題,メトーデ,sehende Liebe
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著者: 石津 正賢
論文題目: 大村はま国語教室における文学の鑑賞指導の研究 -単元「ここにこう生きている少年少女」を中心に-
  本研究の目的は,戦後の新制中学校において大村はまがおこなった文学の鑑賞指導の内実とその特質を明らかにすることにある。本稿では,大村が昭和50年代におこなった「劇化」による鑑賞指導のうち,単元「ここにこう生きている少年少女」(1977.11)に焦点を絞って考察することとする。まず,単元「ここにこう生きている少年少女」の内実を明らかにする。次に,本単元が大村の「劇化」による鑑賞指導の展開のなかで,どのような位置を占めるかを考察する。これらを通して,本単元が大村の「劇化」による鑑賞指導の一つの「到達点」であることを明らかにする。
キーワード:大村はま,単元学習,文学の鑑賞指導,劇化
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著者: 田村 澄香
論文題目: 名詞文過去形の「XハY」の時間性 -「想起」をめぐって-
  本稿は名詞文過去形を取り上げて,「XハY」の時間性を問い,基本的な過去表現と「想起」(ムードのタ)とは同じメカニズムがはたらいていることを主張した。「XハYダッタ」において,原則的に「XハY」には過去性があるが,発話時を基準にして積極的な現在性や未来性がある場合,原則から逸脱して「想起」になる。「想起」では「現在(あるいは未来),XハYダ」という関係をダッタが過去に位置付ける。「XハY」に積極的な現在性未来性を保証する要因として,名詞の時間性や直示性,X項のテンス,言語外情報がある。「明日はテストだった」の「明日」という語は未来という時間性と未来を指し示す直示性の両方を備えている。
キーワード:名詞文,ダッタ,想起,時間性,直示性
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著者: 和田 幸司
論文題目: 近世播磨国における部落寺院本末関係の一考察
  本稿は,近世播磨国における部落寺院本末制度の基礎的研究である。従来,史料検討なしに使用されてきた西本願寺史料『穢寺帳』を再検討し,真宗受容段階においては4系統(源正寺系・金福寺系・本照寺系・万宣寺系)であった本末関係が,『穢寺帳』成立期の天保14(1843)~弘化2(1845)年段階で,部落寺院の上寺として12カ寺が存在することを明らかにした。また,19世紀初頭における「四ケ之本寺」としての金福寺の本願寺での位置と『言経卿記』に記事がみえる天正17(1589)~慶長6(1601)年における金福寺の本願寺での位置は異なっていたことを指摘した。そして,部落寺院史の多角的研究を可能にするため,部落寺院本末制度を時期ごとに再検討する必要性,本末関係を支えた部落寺院門徒の信仰の内実や経済的な側面を検討する必要性を指摘した。
キーワード:部落寺院,本末関係,穢寺帳,金福寺,寺内町
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著者: 藤田 知里
論文題目: ヴィクトリア朝盛期の日用生産品と大衆美術教育 -職業美術教育を中心として-
 ヴィクトリア朝盛期において,科学・芸術局の局長であったヘンリー・コウル(Henry Cole)がイギリス製品のデザイン改善を当初の目的として,大衆美術教育を発展,普及させた。本研究では,当時の日用生産品のデザインと大衆美術教育との関わりについて職業美術教育を中心として考察し,またその政策に内在する諸問題を検討したものである。その結果,日用生産品のデザインは職業美術教育の指導課程を反映し,一方で職業美術教育もまた,社会情勢からの影響を受けており,デザイン,美術教育,社会情勢分野は,それら三つを軸として連動していたことが明らかになった。
キーワード:職業美術教育,ヴィクトリア朝,デザイン,日用品
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著者: 加藤 晴子
論文題目: 生活文化の視点からの「こもりうた」の学習へのアプローチ -事例研究をもとに-
 歌を歌うことは人間のもつ生活感覚に基づいた自然な音楽的行為である。歌は元来,それぞれ特有の機能をもっている。「こもりうた」もその一つである。本稿では「中国地方の子守歌」の元歌を取り上げ,元歌の伝承者である岡田妙子さんへのインタビューを通して生活の中で生まれた「こもりうた」のもつ役割について考察した。
 その結果をもとに生活文化の視点から「こもりうた」の学習例を提案した。学習例は「こもりうた」のもつ機能に着目したものであり,音楽を文化の側面から捉える一つの手段である。系統的,発展的に「こもりうた」の学習を進めることで自文化を起点とした音楽学習の展開が可能となり,自文化理解を拡大し深めることが期待できる。
キーワード:「こもりうた」,「中国地方の子守歌」の元歌,生活文化,「こもりうた」の機能,「こもりうた」の学習
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著者: 鈴木 慎一朗
論文題目: 師範学校における音楽教育 -「師範教育令改正」(1943)前後の動向を中心として-
 本稿の目的は,1943年の「師範教育令改正」が師範学校の音楽教育に与えた影響について考察することである。師範学校は,この改正により官立専門学校程度へと昇格する。方法として,「師範教育令改正」前後の1931年から1945年までに焦点を当て,文献調査と聞き取り調査を行った。これらの調査の結果,官立専門学校程度昇格に伴い,師範学校の「音楽」授業時数が若干増えたり,文部省国定教科書『師範音楽』(1943)が出版されたりした。しかしながら戦争の激化に伴い,「学徒勤労令」(1944)や「戦時教育令」(1945)等が発布されたことで,授業時数や活動内容が制限を受け,十分な音楽教育を実施することが不可能であったことが明らかになった。
キーワード:「師範教育令改正」,増課科目,官立専門学校,オルガン,『師範音楽』
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著者: 川西 光子, 中岡 義介
論文題目: ブラジル南部三州地域における「移民都市」の空間構造に関する比較研究 -プラニング思想の解明をめざして-
 本研究の目的は,ブラジル南部三州地域という同一地平における日・独・伊の「移民都市」の空間構造を調査し,それらを比較分析することにより,「移民都市」のプラニング思想を解明することである。研究の結果明らかになったことは,1)ドイツ系移民都市は社交社会,イタリア系移民都市はカトリック社会,日系移民都市は日本人会というそれぞれのネットワークを通じて形成されていること,2)それぞれのネットワークを支えるプラニング思想ともいえるものは,組合組織,宗教組織,小国家的組織であること,3)プラニング思想は,都市の固有性をもたらすと同時に,そとの世界とつながりうる機能をもっていることである。
キーワード:ブラジル南部三州地域,「移民都市」,空間構造,プラニング思想
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著者: 厚東 芳樹, 梅野 圭史, 上原 禎弘, 辻 延浩
論文題目: 小学校体育授業における教師の授業中の「出来事」に対する気づきに関する研究 -熟練度の相違を中心として-
 本研究は,小学校高学年(5・6年生)を担任している12名の教師を対象に,児童からみた授業評価(態度得点)の高い教師(上位群)とそうでない教師(下位群),および教職経験年数の多い教師(ベテラン群:16~27年)とそうでない教師(中堅群:6~9年)とに振り分け,「授業中の出来事(予測・制御できる出来事とそうでない出来事の双方を合わせた事件・事柄)」に対する気づきとそれにもとづく「推論-対処」を質的側面および量的側面から比較・検討することを目的とした。その結果,教師の「授業中の出来事」に対する気づきは,態度得点および経験年数からみた熟練度の相違の影響を強く受けることが認められた。
キーワード:小学校体育授業,「出来事」への気づき,教師の熟練度,教師教育
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著者: 田中 弘之, 佐々木 弘幸, 村上 智計, 土井 剛史, 山中 一剛
論文題目: ラグビーフットボール競技における投距離と上肢の筋力との関係 -筋力トレーニングが等速性筋力と投能力に及ぼす影響-
 ラグビーフットボール競技における投距離と上肢の等速性筋力及び上肢の筋力トレーニングの有効性について,実験的手法により検証した。フラットパスによるボールの投能力は,特に,肘関節屈曲動作の等速性筋力の多寡が大きな要因であると推察された。また,スクリューパスの投距離と前腕回内・回外運動における等速性筋力との間にも有意な相関関係が認められた。トレーニング後における手首の背屈・掌屈運動における等速性筋力は,ボールの投距離に対して高い寄与率を示した。従って,これら上肢の筋群の筋力トレーニングによる投能力の改善が期待され,本研究で実践した投能力向上を目的としたトレーニング処方の有効性が示唆された。
キーワード:ラグビーフットボール,等速性筋力,筋力トレーニング,投距離,投能力
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