兵庫教育大学大学院連合学校教育学研究科主催特別講演会「市民性教育課題の解決に向けた新提案」

兵庫教育大学大学院連合学校教育学研究科主催特別講演会
「市民性教育課題の解決に向けた新提案」

平成20年1月10日木曜日、兵庫教育大学ライブラリーホールにて、兵庫教育大学大学院連合学校教育学研究科主催特別講演会「市民性教育課題の解決に向けた新提案」が行われました。

講演者はセントマーティンズ・カレッジ(英国)のピーター・ブレット先生、エクセター大学(英国)のキャシー・ホールデン先生です。13時10分から連合学校教育学研究科研究科長の岩田一彦先生によるご挨拶、講演者紹介が行われ、13時20分より両先生に御講演を頂きました。各先生方の講演概要は以下になります。

Peter Brett“Citizenship, Community Involvement and Participation: Educating and people as change-makers”

概要

ブレット先生の御講演では、参画と社会連携という視点に基づくシティズンシップ教育の理論的側面、そして実際のプロジェクトを通した具体的な学習内容とその方法といった、実践的側面の2つの観点が示されました。

はじめに、ブレット先生はシティズンシップ教育が「政治的意識や社会正義・機会平等への関わりに基づいた教育」であるとの提言を行い、その方略としてコミュニティーへの積極的な参加の必要性を指摘されました。その理由として、自分とコミュニティーとの関係性の意識が、社会における基本的な政治問題を理解することにつながるといった点を示されました。

シティズンシップ教育の目標は「批判的な意識(Critical Consciousness)」の形成であり、その特質として以下4点を指摘されました。

  1. 権力の意識化
  2. 批判的リテラシー
  3. 脱社会化
  4. 自己組織性

その後、コミュニティーを基盤とした学習を通して批判的な意識を学習する具体的手順として以下7つのプロジェクトを取り上げ、具体的な学習内容とその方法を示されました。

事例1、ハルトン:マージー河にかかる橋
事例2、ブラックプールの再開発問題
事例3、モーカム湾の環境の持続可能性、モーカム湾の遊歩道再生、ザル貝漁とグローバル化
事例4、オールダム
事例5、若者と湖水地方国立公園
事例6、ウィグトンの若者夜間外出禁止令
事例7、水不足を終わらせよう

Cathie Holden“The challenge of Teaching Controversial Issues: teachers’ perceptions and effective practice in primary and secondary classrooms”

概要

ホールデン先生は、論争問題学習の定義と役割の明確化に試みられ、それに伴い2つの具体的な授業方略が示されました。

まず、論争問題の定義に関する以下5つの特質が示されました。

  1. 利害関心に関わる時事的な問題。領域に起こる
  2. その問題に関して、相反する価値観や意見が存在する
  3. 相反する優先順位や物質的な利害関心が存在する
  4. 感情的な高ぶりを伴う可能性がある
  5. 対象となる人々や問題、その領域が複雑に入り組んだものである

ホールデン先生は、論争問題を日常生活の一部として捉えます。それゆえ、学校では子どもたちが日々直面している論争問題に対する民主的議論を行う必要があることを指摘されました。論争問題を授業で扱うことは、「頭と心(head and heart)の両方を駆使させ、知識、批判的思考スキル、情緒的リテラシー(emotional literacy)をも教える機会を提供する」点で重要であるとし、教師が積極的に授業へ取り入れる必要性を強調されました。

次に、論争問題教授の際に教師の役割が学習内容と同様に重要であることが強調され、その際に有効な以下4つのアプローチが紹介されました。

  1. 中立の立場(ファシリテイターとしての教師)
  2. 均衡の取れたアプローチ(論争問題の多面的な解釈)
  3. 自己表明アプローチ(議論の活性化を目的とした意見の表明)
  4. 合意を疑うアプローチ(反対意見の意識的な抽出)

講演の最後には、以下2つの事例を使い、具体的な教授学習の手順を示されました。

講演後の質疑応答では、市民性教育が目指す子ども像、また、市民性教育における価値の扱い方等、我が国でも頻繁に議論がなされている原理的な課題に関する意見交換がなされました。

最後になりましたが、御講演を頂きましたピーター・ブレット先生、キャシー・ホールデン先生にあらためて感謝の意を表するとともに、ご尽力頂きました兵庫教育大学連合学校教育学研究科のスタッフへお礼申し上げたいと思います。

(文責 田中 伸)

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